「謎ジパング」を読む


著者:明石散人
出版社:講談社文庫

まず単なる歴史ミステリ小説だと言う点には留意しておきたい。間違いや願望が論証の材料にされていても本書の形式上仕方がないということなのである。私は歴史物では小説は混乱を招くため、歴史物として含めない方向なので、この点で本書を読み始めた時点で失敗だったのかもしれない。

ただ既に各種説を知っている題材であった以下「邪馬台国に謎はない」「日本最古の将棋駒」等を読む限り、論証材料に虚構要素がないようにも見えるため厄介なのも確かだ。だから全て論証材料に虚偽はないと思いたいのだが、そうさせてくれないのが本書の嫌らしいところ。特に個人的に苦手分野の江戸時代関連については他書による予備知識が決定的に欠けているせいで困ったものと言える。

本書収録の他連作短篇のタイトルを以下に挙げておく。

『桃太郎の正体 お伽話はどうやって作られる?』
『どこからやって来たのか日本の茶 抹茶の栄西 VS. 煎茶の円爾』
『オムスビの不思議 なぜ三角になったのか』
『「皿屋敷」の謎を探る 番町それとも播州』
『邪馬台国に謎はない 倭人伝の裏側』
『日本最古の将棋駒 王様はいなかった?』
『金閣寺の伝説 究竟頂天井板の謎』
『江戸っ子の洒落 命を賭けた江戸の闘食会』
『富士山雑話 誰も気づかなかった? 北斎の失敗』
『宇宙を閉じ込めた日本人 日本人にとっての「有限」と「無限」』
『青いチューリップ 「野のユリ」はどこからやって来た?』
『伽藍先代萩 頼朝と義経は本当は仲がよかった?』
『黄金の国ジパング 東経一四一度線の驚愕』
『江戸文化立役者の罪 蔦屋重三郎と居候達に何があったか』
『川中島合戦の通説の真偽 上杉謙信は空を飛びたかった』
『失われた大四元 太安万侶は麻雀をしていた?』
『国宝金印のキズ (1)漢委奴国王の金印はいくつもあった』
『金印発見の裏事情 (2)金印をデビューさせた男』

(2007年1月記す)






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