「日本書紀の謎を解く 述作者は誰か」を読む


著者:森博達
出版社:中公新書

日本書紀の研究本として、これほど客観性に富んだものも珍しいのではないか。それだけに本書の研究論証は非常に明々白々であり、実際の困難な研究とは裏腹に、論証の流れ自体については理解しやすく、納得せざるを得ないものとなっている。

メインテーマとして、日本書紀は原文は全て漢文であるものの、その音韻や文法の分析によって、漢文の種類において明確に大きく2種類に分かれるというのだ。つまり和化漢文と中国唐語そのものとに。

その点の証明を行い、結果的に日本書紀の成立過程を推理してしまうのが本書である。

なお、本書の結論である巻数ごとの分類は以下のようになっている。
β群(和化漢文(非中国語))
 1巻〜13巻および22巻23巻28巻29巻


α群(唐時代の中国語)
 14巻〜21巻および24巻〜26巻




古代史から日本書紀成立過程に興味があるならば、ぜひ一読をお奨めしたい書籍である。ここから更なる妄想や推理が生まれてくること間違いないだろう。
(2006年12月記す)






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