文庫版「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」を読む


著者:塩野七生
出版社:新潮文庫

文庫版で読んだため、1巻(上)と2巻(下)に相当する。

見開き要約

<1巻(上巻)>の見開き要約

前753年、一人の若者ロムルスと彼に従う3千人のラテン人によりローマは建国された。7代続く王政の下で国家としての形態をローマは整えてゆくが、前509年、共和政へ移行。その後、成文法制定のために先進国ギリシアへ視察団を派遣する。ローマ人は絶頂期のギリシアに何を見たのか―― 。比類なき大帝国を築きあげた古代ローマ。その一千年にわたる興亡の物語がいま幕を開ける。

<2巻(下巻)>の見開き要約

ギリシアから視察団が戻り、前449年、共和政ローマは初の成文法を発表。しかしその内容は平民の望むものとは程遠く、貴族対平民の対立の構図は解消されなかった。近隣諸族との戦闘もさらに続き、前390年夏にはケルト族が来襲、ローマで残虐のかぎりをつくす。建国以来初めての屈辱だった。ローマはいかにしてこのどん底から這い上がり、イタリア半島統一を成し遂げるのか。





目次

<1巻(上巻)>の目次

『ローマ人の物語』の文庫刊行に際しての、著者から読者にあてた長い手紙
カバーの銀貨について
読者へ
序章
第1章 ローマ誕生
落人伝説/紀元前八世紀当時のイタリア/エトルリア人/イタリアのギリシア人/建国の王ロムルス/ 二代目の王ヌマ/三代目の王トゥルス・ホスティリウス/四代目の王アンクス・マルキウス/五代目の王タルクィニウス・プリスコ/ 六代目の王セルヴィウス・トゥリウス/最後の王「尊大なタルクィニウス」
第2章 共和政ローマ
ローマ、共和国に/ギリシアへの視察団派遣/ギリシア文明/アテネ/スパルタ/ペルシア戦役/覇権国家アテネ
図版出典一覧


<2巻(上巻)>の目次

カバーの銀貨について
第2章 共和政ローマ(承前)
ペリクレス時代/ギリシアを知って後/ローマの貴族/ケルト族来襲/ギリシアの衰退/立ちあがるローマ/政治改革/ローマの政体/「政治建築の傑作」/「ローマ連合」 /街道/市民権/山岳民族サムニウム族/南伊ギリシャとの対決/戦術の天才ピュロス
ひとまずの結び
年表
参考文献
図版出典一覧



感想

受験には使わなかったものの高校一年の時に中途半端に学んだ世界史(確か500年くらいまでだった)および 大学法学部で受講したマイナー学問「ローマ法」以来の邂逅といったところか。 その若かりしころから刊行中の本書の存在は知っており多少の興味もかき立てられていたが、読むには至っていなかったのだ。

共和制ローマの政体については多少は覚えていたが、このような数奇な運命を切り抜けていたとは知らなかったため、 非常に興味深く楽しく読むことが出来た。そもそもからしてトロヤ戦争でも有名なトロイ文明の末裔という伝説を持っていたとも知らなかったし、 王政ローマについても知らなかったのだ

とにかく黎明期のローマ、ギリシャ最盛期のローマ、エトルリア最盛期のローマ、カルタゴと対する前のローマ、イタリアを統一する前のローマ、 ローマ人の義務と権利のバランスなどローマ人の文化、民族性などを知ることが出来る恰好の一冊といえるだろう。

古代史に現在の価値観に代表される感覚を持ち込んでは公平ではないだけに、確かにキリスト教徒でも、キリスト教文化圏でも、直接影響の大きいイスラム教徒でもない日本人だからこそノイズを最小限にした歴史分析が出来るのかもしれない。

(2012年5月記す)




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