文庫版「ローマ人の物語 最後の努力」を読む


著者:塩野七生
出版社:新潮文庫

文庫版で読んだため、35巻(上)、36巻(中)、37巻(下)に相当する。

見開き要約

<35巻(上巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――帝国延命の努力もむなしくローマはさらなる衰亡へ。

ローマ再建に立ち上がったディオクレティアヌス帝は紀元293年、帝国を東西に分け、それぞれに正帝と副帝を置いて統治するシステム「四頭政」(テトラルキア)を導入した。これによって北方蛮族と東の大国ペルシアの侵入を退けることに成功。しかし、膨れ上がった軍事費をまかなうための新税制は、官僚機構を肥大化させただけだった。帝国改造の努力もむなしく、ローマはもはや、かつての「ローマ」ではなくなっていく――。

<36巻(中巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――キリスト教の公認、その影響ははかり知れない。

紀元305年、ディオクレティアヌスが帝位から退き、新たに指名された四人の皇帝による第二次四頭政がはじまる。しかし、その後六人もの皇帝が乱立。その争いは内乱の様相を呈する。激しい政治闘争と三度の内戦ののちに勝ち残ったのは、東の正帝リキニウスと、のちの大帝と呼ばれることになる西のコンスタンティヌス。二人は共同で「ミラノ勅令」を発布し、一神教であるキリスト教を公認した。こうしてローマの良き伝統は跡形もなく崩れ去った。

<37巻(下巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――帝国に君臨した絶対君主、世界はすでに中世の入り口に。

紀元324年、ライヴァルのリキニウスを敗走させ、ただ一人の最高権力者として内戦を勝ち残ったコンスタンティヌス。帝国全体の一新を企て、自らの名を冠した新都コンスタンティノポリスを建設。帝国の絶対専制君主として君臨したコンスタンティヌス帝は、旧来の安全保障の概念を放棄し、キリスト教を特権的に振興。ローマをまったく別の姿に変えてしまう。それは中世のはじまりの姿だった――。




目次

<35巻(上巻)>の目次

カバーの銀貨について
読者に
第一部 ディオクレティアヌスの時代(紀元二八四年―三〇五年)
迷走からの脱出/「二頭政(ディアルキア)」/「四頭政(テトラルキア)」/ペルシアとの関係/兵力倍増/
帝国改造/官僚大国/税金大国/統制国家/ディオクレティアヌスとキリスト教/ディオクレティアヌス浴場/
引退
図版出典一覧


<36巻(中巻)>の目次

カバーの銅貨について
第二部 コンスタンティヌスの時代(紀元三〇六年―三三七年)
「四頭政(テトラルキア)」崩壊/皇帝六人/首脳会談/「公敵」マクセンティウス/決戦/歴史を創った戦闘/
「ミルヴィウス橋の戦闘」/パッチワークの凱旋門/キリスト教公認
図版出典一覧


<37巻(下巻)>の目次

カバーの金貨について
第二部 コンスタンティヌスの時代(承前)(紀元三〇六年―三三七年)
唯一人の最高権力者(インペラトール)/新都建設/指導層の変貌/軍の変貌/富の格差/家庭内悲劇
第三部 コンスタンティヌスとキリスト教
雌伏の時期/表舞台に/「ミラノ勅令」/キリスト教振興策/ニケーア公会議/
「インストゥルメントゥム・レーニ」(Instrumentum regni)つまりは「支配の道具」
年表
参考文献
図版出典一覧


感想

帝国を事実上東西に分割する「四頭政」という強力な統治システムによって、ようやく治安の回復 の道筋が出来たと思いきや、それは崩壊への序曲。

キリスト教の公認によって、ローマがローマたり得た多神教世界のローマの神々は退場を余儀なくされ、 もはやローマである意味を失いつつあるのが、実に読んでいて淋しい限り。

本書におけるキリスト教はまさに悪役といっても差し支えないだろう。

(2013年7月記す)




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