文庫版「ローマ人の物語 キリストの勝利」を読む


著者:塩野七生
出版社:新潮文庫

文庫版で読んだため、38巻(上)、39巻(中)、40巻(下)に相当する。

見開き要約

<38巻(上巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――キリスト教の公認と大帝の死。帝国は内乱に突入する。

紀元337年、大帝コンスタンティヌスがついに没する。死後は帝国を五分し、三人の息子と二人の甥に分割統治させると公表していた。だがすぐさま甥たちが粛清され、息子たちも内戦に突入する。最後に一人残り、大帝のキリスト教振興の遺志を引き継いだのは、次男コンスタンティウス。そして副帝として登場したのが、後に背教者と呼ばれる、ユリアヌスであった。

<39巻(中巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――キリスト教国教化に抵抗する若き皇帝の孤独な闘い。

若き副帝ユリアヌスは、前線での活躍で将兵や民衆の心を掴んでゆく。コンスタンティウスは討伐に向かうが突然病に倒れ、紀元361年、ユリアヌスはついに皇帝となる。登位の後は先帝たちの定めたキリスト教会優遇策を全廃。ローマ帝国をかつて支えた精神の再興を目指し、伝統的な多神教を擁護した。この改革は既得権層から強硬な反対に遭うが、ユリアヌスは改革を次々と断行していくのだった――。

<40巻(下巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――キリスト教ついに国教化へ。背後に政治家的な宗教人が。

ユリアヌスは数々の改革を実行したが、その生涯は短く終わる。政策の多くが後継の皇帝たちから無効とされ、ローマのキリスト教化は一層進んだ。そして皇帝テオドシウスがキリスト教を国教と定めるに至り、キリスト教の覇権は決定的となる。ついにローマ帝国はキリスト教に呑み込まれたのだ。この大逆転の背後には、権謀術数に長けたミラノ司教、アンブロシウスの存在があった。




目次

<38巻(上巻)>の目次

カバーの銀貨について
読者に
皇帝コンスタンティウス(在位、紀元三三七年―三六一年)
邪魔者は殺せ/帝国三分/一人退場/二人目退場/副帝ガルス/賊将マグネンティウス/兄と弟/
副帝の処刑/ユリアヌス、副帝に/コンスタンティウスとキリスト教/狙い撃ち/ガリアのユリアヌス/
積極戦法/ゲルマン民族/ストラスブールの勝利/ローマでの最後の凱旋式/ガリア再興
図版出典一覧


<39巻(中巻)>の目次

カバーの金貨について
第二部 皇帝ユリアヌス(在位、紀元三六一年―三六三年)
古代のオリエント/ササン朝ペルシア/アミダ攻防戦/ユリアヌス、起つ/内戦覚悟/リストラ大作戦/
「背教者」ユリアヌス/対キリスト教宣戦布告/アンティオキア/ペルシア戦役/首都クテシフォン/
ティグリス北上/若き死/ユリアヌスの後/講和締結/皇帝ユリアヌスの生と死
図版出典一覧


<40巻(下巻)>の目次

カバーの金貨について
第三部 司教アンブロシウス(在位、紀元三七四年―三九七年)
蛮族出身の皇帝/フン族登場/ハドリアノポリスでの大敗/皇帝テオドシウス/蛮族、移住公認/
親キリスト教路線の復活/「異教」と「異端」/「異端」排斥/「異教」排斥/論戦/
キリストの勝利(異教に対して)/キリスト教、ローマ帝国の国教に/
キリストの勝利(皇帝に対して)/東西分割
年表
参考文献
図版出典一覧


感想

ついにローマ帝国の国教になってしまったキリスト教。そして皇帝の地位は失墜してしまった。 ユリアヌスの時代はもし長く、そしてうまく内部的にも外部的にも立ち回ることができていたならば、 というIFを想像することが許されるなら、ローマ帝国は復活を遂げていたかはわからないながらも、 キリスト教がこれほど隆盛することも無く、ユダヤ教並みに有名だけど局所的という宗教に留まったのかもしれない。

(2014年8月記す)




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