文庫版「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」を読む


著者:塩野七生
出版社:新潮文庫

文庫版で読んだため、8巻(上)、9巻(中)、10巻(下)に相当する。

見開き要約

<8巻(上巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――世界史上最高の指導者、その波乱の生涯がはじまる。

紀元前100年、ローマの貴族の家に一人の男児が誕生した。その名はユリウス・カエサル。共和政に幕を引き、壮大なる世界帝国への道筋を引いた不世出の創造的天才は、どのような時代に生まれ、いかなる環境に育まれたのか。古代から現代までの、歴史家をはじめとする数多の人々を魅了し続けた英雄カエサルの「諸言行」を丹念に追い、その生涯の全貌を鮮やかに描き出した、シリーズの頂点をなす一作。

<9巻(中巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――戦争の天才は、ガリア戦役をどう戦ったか

長き雌伏の時を経たカエサルが「陽の当たる道」を漸く歩みはじめた頃、ポンペイウスは既に地中海全域を覇権下に収めていた。カエサルもスペイン統治を成功させ、危機感を強めた「元老院派」は両者の排除を図ろうとする。しかしクラッススを加えた三者は「三頭政治」の密約を交わし、カエサルは41歳で執政官に就任。ついに国家大改造に着手し、さらなる野望実現のため、ガリアへと旅立つ。

<10巻(下巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――ルビコンを渡ることを決めた。世界はそのとき変わった。

ガリアの諸部族の粘り強い抵抗に苦しみながらも、8年にわたる戦役を制し、ついにカエサルは悲願のガリア征服を成し遂げる。しかしその間、パルティアではローマ軍が敗北し、軍を率いていたクラッススが死亡。「三頭政治」の一角は崩れ、カエサル打倒を誓う「元老院派」はこの機に乗じてポンペイウスの取り込みを図る。新秩序樹立のためのカエサルの壮絶なる孤高の戦いが再びはじまる。





目次

<8巻(上巻)>の目次

カバーの銀貨について
第一章 幼年期  [紀元前一〇〇年〜前九四年(カエサル誕生-六歳)]
 どこで生まれ育ったのか/環境
第二章 少年期  [紀元前九三年〜前八四年(カエサル七歳-十六歳)]
 家庭教師/体育/実地教育(一)/実地教育(二)/結婚/成人式
第三章 青年前期  [紀元前八三年〜前七〇年(カエサル十七歳-三十歳)]
 独裁者スッラ/逃避行/帰国/弁護士開業/国外脱出/海賊/留学/帰国/ポンペイウスとクラッスス
第四章 青年後期  [紀元前六九年〜前六一年(カエサル三十一歳-三十九歳)]
 スタート・ライン/宣告/ポンペイウスの台頭/按察官就任/三十七歳にして起ちはじめる/最高神祇官/反「元老院派」第一歩/「カティリーナの陰謀」/「偉大なるポンペイウス」/スキャンダル/カエサルと女/カエサルとお金
図版出典一覧


<9巻(中巻)>の目次

カバーの銀貨について
第五章 壮年前期  [紀元前六〇年〜前四九年一月(カエサル四十歳-五十歳)]
 四十にして起つ/「三頭政治」/執政官就任/「農地法」/ガリア属州総督/手足の確保/『ガリア戦記』

ガリア戦役一年目(紀元前五八年)
 ゲルマン問題/その間、ローマでは―
ガリア戦役二年目(紀元前五七年)
 セーヌの北東/その間、ローマでは―/「ルッカ会談」
ガリア戦役三年目(紀元前五六年)
 大西洋
ガリア戦役四年目(紀元前五五年)
 ライン渡河/ドーヴァー海峡/首都改造の第一歩
ガリア戦役五年目(紀元前五四年)
 第二次ブリタニア遠征/十五個大隊壊滅/ガリアでの初の越冬/その間、ローマでは―
図版出典一覧


<10巻(下巻)>の目次

第五章 壮年前期(承前)  [紀元前六〇年〜前四九年一月(カエサル四十歳-五十歳)]
ガリア戦役六年目(紀元前五三年)
 ライン再渡河/ガリアとゲルマンの比較論/クラッスス/パルティア遠征/首都の混迷
ガリア戦役七年目(紀元前五二年)
 ヴェルチンジェトリックス/ガリア総決起/カエサル、撤退/アレシア攻防戦/「ガリア戦記」刊行
ガリア戦役八年目(紀元前五一年)
 戦後処理(一)/戦後処理(二)

ルビコン以前
 「カエサルの長い手」/護民官アントニウス/「元老院最終勧告」/ルビコンを前にして/二人の男のドラマ/「賽は投げられた!」
図版出典一覧



感想

知っているようで細部を知らない人の物語を読むのは心が躍って楽しいもの。
前巻のマリウスとスッラから繋がる混迷の時代から直接繋がる、もしくは重複もする本作への興味も尽きないではないか。 なにしろカエサルである。そのカエサルのルビコン以前までを記したのが、今回の3巻となる。ルビコンとはルビコン川のことであり、ローマと北伊属州を分け隔てるとの超えてはならない一線のことである。

若き日の苦闘から三頭政治、ガリアでの西へ東への輝かしい戦役、それは後のフランスやイギリスをも作り出した功績ではないか。 特に青年期の目立たなさやイギリスに渡っていたのは個人的に意外だったので驚いたばかり。また今でも仏の英雄扱いされているというヴェルチンジェトリックスは勉強になるというしかない。 さて、賽は投げられた、この後の活躍ぶりも楽しみだ。それはルビコン後になる。

政治力、軍事力、人的魅力、教養、行動原理の明確さ全てがS級のカエサル、このことを妻子認識させられる一書といえよう。

(2012年10月記す)




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