文庫版「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後」を読む


著者:塩野七生
出版社:新潮文庫

文庫版で読んだため、11巻(上)、12巻(中)、13巻(下)に相当する。

見開き要約

<11巻(上巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――盟友ポンペイウスとの宿命の戦いの火蓋が切られる。

軍の即時解散と帰国を命ずる「元老院最終勧告」を突きつけられたカエサルは、国賊と呼ばれるのを覚悟で、自軍とともにルビコンを越える。「カエサル渡河、南進中」との報はローマを震撼させ、ポンペイウスと「元老院派」議員の多くが首都ローマを脱出する。間もなくカエサルはイタリア半島を掌握。ポンペイウスはギリシアで迎撃に備える。ローマ世界全域で、両雄の覇権をめぐる戦いの火蓋が切られようとしていた。

<12巻(中巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――理想の世界国家樹立のため、ついに大改革を断行。

カエサルは、ギリシアでのポンペイウスとの直接対決に勝利し、地中海のほぼ全域を掌握する。しかし首都ローマでは、カエサルの片腕アントニウスの失政により、兵士の従軍拒否、経済停滞という事態が生じていた。帰国後カエサルは巧みな手腕でこれを解決。北アフリカとスペイン南部で相次いで蜂起したポンペイウス派の残党をも制圧する。その間にも、新秩序樹立のために数々の改革を断行していくのだが……。

<13巻(下巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――なぜカエサルは暗殺の刃に倒れたのか。

前44年3月15日、ローマ都心のポンペイ回廊で、ブルータスら十四人の元老院議員にカエサルは暗殺される。地中海全域を掌握し、迅速に数々の改革を断行、巨大な権力を手中にして、事実上、帝政を現実のものとした直後のことだった。カエサル暗殺の陰で何が起こっていたのか。カエサル亡き後の帝国を誰が継承するのか。そして、カエサルの遺した壮大なる世界国家の構想は、果して受け継がれていくのだろう。




目次

<11巻(上巻)>の目次

カバーの銀貨について
第六章 壮年後期  [紀元前四九年一月〜前四四年三月(カエサル五十歳-五十五歳)]
 「ルビコン」直後/ポンペイウス、首都放棄/コルフィニオ開城/ポンペイウス、本国放棄/大戦略/
 キケロ対策/首都ローマ/西を撃つ/マルセーユ攻防/スペイン戦役/逆転/降伏/ストライキ/
 北アフリカ戦線/カエサル、執政官に/戦力比較/ギリシアへ/第二陣到着/合流/
 ドゥラキウム攻防戦/包囲網/激闘/撤退/誘導作戦/決戦へ/ファルサルス/紀元前四八年八月九日/
 追撃/アレクサンドリア/クレオパトラ/アレクサンドリア戦役
図版出典一覧


<12巻(中巻)>の目次

カバーの銀貨について
第六章 壮年後期(承前)  [紀元前四九年一月〜前四四年三月(カエサル五十歳-五十五歳)]
 「来た、見た、勝った」/カエサルとキケロ/政治家アントニウス/アフリカ戦役/タプソス会戦/
 小カトー/凱旋式/国家改造/暦の改定/通貨改革/ムンダの会戦/遺言状/「帝国」へ/市民権問題/
 政治改革(元老院/市民集会/護民官/終身独裁官)/金融改革/行政改革/「解放奴隷」登用/属州統治/
 司法改革/社会改革(福祉政策/失業対策・植民政策/組合対策/治安対策/交通渋滞対策/清掃問題/贅沢禁止法)/
 首都再開発/カエサルのフォルム/教師と医師/その他の公共事業/カエサルの特権/不満な人びと
図版出典一覧


<13巻(下巻)>の目次

第七章 「三月十五日」  [紀元前四四年三月十五日〜前四二年十月]
 三月十五日/三月十六日/遺言状公開/妥協/カエサル、火葬/逃走/オクタヴィアヌス/暗殺者たち/
 国外脱出/アントニウス弾劾/復讐/「第二次三頭政治」/キケロの死/「神君カエサル」/ブルータスの死
第八章 アントニウスとクレオパトラ対オクタヴィアヌス  [紀元前四二年〜前三〇年]
 第一人者アントニウス/クレオパトラ/「ブリンディシ協定」/オクタヴィアヌスの恋/
 アントニウスとクレオパトラの結婚/パルティア遠征/異国での凱旋式/対決へ/準備/
 アクティウムの海戦/最終幕/エピローグ
カエサル年紀
参考文献
図版出典一覧


感想

上巻はカエサルVSポンペイウスおよび元老院派との内戦を描き、中巻はカエサルの国家改革を描き、下巻はカエサル暗殺後の暗殺者のその後と後継者争いを描く。

全般的に「ルビコン以前」以上に、作者のカエサル愛があふれているような感じだ。カエサルはスーパースターにも程がある。 もちろん間違いも犯すが、そのリカバリー方法があまりにも巧みであり、全てが成功しているように錯覚してしまう。これでは民衆は熱狂するしかないし支持するしかなかったということか。

それにつけてもポンペイウスやキケロ、小カトー、ラビエヌスはカエサルとの対立者ではあっても一定の扱いを受けているのに、 カエサル暗殺後のアントニウスとクレオパトラときたら完全に馬鹿アホ間抜け扱い。特にクレオパトラへの評価の低さは極めつけとしか言えない。 本書を読む限りでは、アントニウスとクレオパトラは負けて当然、勝てる見込みゼロにしか見えなかった。

敗者に対して極めて寛容な独裁者カエサル、その誰もの約束を信用したカエサルは暗殺された。 このことがその後の歴史に現れる独裁者たちに影響を与えたとすれば、マルクス・ブルータスやカシウス達の罪はより重いものとなったということなのだろう。

(2012年10月記す)




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