文庫版「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」を読む


著者:塩野七生
出版社:新潮文庫

文庫版で読んだため、14巻(上)、15巻(中)、16巻(下)に相当する。

見開き要約

<14巻(上巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――初代皇帝アウグストゥスの「ローマによる平和」。

ユリウス・カエサルが暗殺されてから十五年。彼の養子オクタヴィアヌスは、養父の遺志に逆らうように共和政への復帰を宣言する。これに感謝した元老院は「アウグストゥス」の尊称を贈り、ローマの「第一人者」としての地位を認めた。しかしこの復帰宣言は、カエサルの理想であった「帝政」への巧妙な布石であった──。天才カエサルの構想を実現した初代皇帝の生涯を通じて、帝政の成り立ちを明らかにする。

<15巻(中巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――天才の遺志を継いだ男による、孤高にして緻密な政治ドラマ。

「帝政」の名を口にせず、しかし着実に帝政をローマに浸透させていくアウグストゥス。彼の頭にあったのは、広大な版図に平和をもたらすためのリーダーシップの確立だった。市民や元老院からの支持を背景に、アウグストゥスは綱紀粛正や軍事力の再編成などに次々と取り組む。アグリッパ、マエケナスという腹心にも恵まれ、以後約200年もの間続く「パクス・ロマーナ」の枠組みが形作られていくのであった。

<16巻(下巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――繁栄の礎を築いた皇帝は、苦悩する父親でもあった。

ローマ世界に平和をもたらし、繁栄の礎を築いたアウグストゥスを、人々は「国家の父」と呼ぶようになる。しかしその彼にも大きな悩みがあった。後継者を誰にするか──妻リヴィアの連れ子ティベリウスは偉大なる父に反発して一方的に引退。娘ユリアの息子たちに期待をつないだものの、いずれも若くして死んでしまう。カエサルの構想した帝政は果してローマに根付くのか。アウグストゥスの「戦い」は続く。




目次

<14巻(上巻)>の目次

カバーの金貨について
読者に
ユリウス=クラウディウス朝系図
第一部 統治前期(紀元前二九年〜前一九年)[アウグストゥス、三十四歳〜四十四歳]
 若き最高権力者/軍備削減/国勢調査/霊廟建設/情報公開/元老院の“リストラ”/共和政復帰宣言/「アウグストゥス」/
 イメージ作戦/書き手から見たアウグストゥス/「内閣」の創設/属州統治の基本方針/「安全保障」/西方の再編成/
 “国税庁”創設/「幸運のアラビア」/「護民官特権」/通貨改革/選挙改革/ローマ時代の「ノーメンクラトゥーラ」/
 血への執着/“食糧安保”/東方の再編成/ユダヤ問題/パルティア問題/エジプト/首都帰還
図版出典一覧


<15巻(中巻)>の目次

カバーの銅貨について
ユリウス=クラウディウス朝系図
第二部 統治中期(紀元前一八年〜前六年)[アウグストゥス、四十五歳〜五十七歳]
 “少子対策”/宗教心/アルプス/ドナウ河/「平和の祭壇」/軍事再編成/総合戦略/近衛軍団/税制改革/
 アグリッパ/マエケナス/ゲルマン民族/行政改革/ドゥルーススの死/ティベリウスの引退
図版出典一覧


<16巻(下巻)>の目次

カバーの銀貨について
ユリウス=クラウディウス朝系図
第三部 統治後期(紀元前五年〜紀元後一四年)[アウグストゥス、五十八歳〜七十七歳]
 祖父アウグストゥス/娘の醜聞/「国家の父」/ティベリウス復帰/反乱/家族の不祥事/詩人オヴィディウス
 /「森はゲルマンの母である」/死
年表
参考文献
図版出典一覧


感想

帝政によって、パクス・ロマーナ、ローマによる平和の基礎を築いた初代皇帝アウグストゥスの物語。

私は帝政はアウグストゥスが皇帝就任を明確にした上で始まったと思いこんでいた。
本書を読むと、アウグストゥスはむしろ共和制復帰を宣言した上で、じわじわと目立たぬように既成事実を重ねていって、 結果的にアウグストゥスが初代皇帝だったのか、と思わせる手腕を見せていたということ、
カエサルの描いた青写真を後継者のアウグストゥスがいかに実現していったのか、と言う点がわかった点で興味深かった。

筆者が冒頭で弁明しているが、〜だろう等といった推測が多すぎるのが気になるが、アウグストゥスの功績と悩み等もよく整理されており、 わかりやすいという点では本シリーズの今までの巻と同様だ。筆者が明らかに好んでいるカエサルと比較しつつ、アウグストゥスの治世を描ききっている。

(2012年10月記す)




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