文庫版「ローマ人の物語 賢帝の世紀」を読む


著者:塩野七生
出版社:新潮文庫

文庫版で読んだため、24巻(上)、25巻(中)、26巻(下)に相当する。

見開き要約

<24巻(上巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――ローマの絶頂期を生み出した「至高の皇帝」の指導力

紀元二世紀、同時代人さえ「黄金の世紀」と呼んだ全盛期をローマにもたらしたのは、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの三皇帝だった。初の属州出身皇帝となったトライアヌスは、防衛線の再編、社会基盤の整備、福祉の拡充等、次々と大事業を成し遂げ、さらにはアラビアとダキアを併合。治世中に帝国の版図は最大となる。三皇帝の業績を丹念に追い、その指導力を検証する一作。

<25巻(中巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――皇帝は帝国をくまなく巡行し防衛体制を磐石にした

トライアヌスの後を継ぎ皇帝となったハドリアヌスは、就任直後、先帝の重臣を粛清し、市民の信頼を失っていた。しかし大胆な政策や改革を実施することにより人気を回復。そして皇帝不在でも機能する組織固めを確実にしたハドリアヌスは紀元121年、念願の帝国視察の大旅行に旅立つ。目的は帝国の安全保障体制の再構築にあった。治世の三分の二を費やした、帝国辺境の旅。それを敢行した彼の信念とは……。

<26巻(下巻)>の見開き要約

ローマ人の物語――帝国に平穏な秩序を与えたのは「ピウス(慈悲深い)」と呼ばれる皇帝だった

安全保障の重要性を誰よりも知っていたハドリアヌスは、治世の大半を使って帝国の辺境を視察し続け、帝国の防衛体制を盤石なものとした。しかしその責務を無事終えローマに戻ったハドリアヌスは、ローマ市民の感覚とは乖離する言動をとり続け、疎まれながらその生涯を終える。そして時代は後継者アントニヌス・ピウスの治世に移るが、帝国全域で平穏な秩序は保たれ続けた。それはなぜ可能だったのか。




目次

<24巻(上巻)>の目次

カバーの金貨について
読者に
第一部 皇帝トライアヌス(在位、紀元九八年〜一一七年)
 皇帝への道/気概を胸に/ひとまずの帰都/古代ローマの“君主論”/空洞化対策/育英資金/
 ダキア問題/第一次ダキア戦役/建築家アポロドロス/「トライアヌス橋」/黒海から紅海へ/
 第二次ダキア戦役/凱旋/戦後処理/公共事業/属州統治/プリニウス/私人としてのトライアヌス/
 パルティア問題/遠征/死
図版出典一覧


<25巻(中巻)>の目次

カバーの金貨について
第二部 皇帝ハドリアヌス(在位、紀元一一七年〜一三八年)
 少年時代/青年時代/皇帝への道/年上の女/登位時の謎/皇帝として/粛清/失地挽回の策/
 ハドリアヌスの「旅」/ライン河/再構築/ブリタニア/ヒスパニア/地中海/オリエント/
 アテネ/北アフリカ/「ローマ法大全」/ヴェヌス神殿/パンテオン
図版出典一覧


<26巻(下巻)>の目次

カバーの金貨について
第二部 皇帝ハドリアヌス(承前)(在位、紀元一一七年〜一三八年)
 ヴィラ・アドリアーナ/再び「旅」に/ローマ軍団/エジプト/美少年/ユダヤ反乱/
 「ディアスポラ」/ローマ人とユダヤ人/余生/後継者問題/死
第三部 皇帝アントニヌス・ピウス(在位、紀元一三八年〜一六一年)
 幸福な時代/人格者/マルクス・アウレリウス/「国家の父」
年表
参考文献
図版出典一覧


感想

五賢帝のうちの真ん中の三人を取り上げたのが本作となっている。

ローマ帝国がもっとも幸福だった時代とはいえ、三者三様なのが面白い。また彼らは前後のネルヴァ、マルクスアウレリウスもそうだが 血脈の世襲ではないという点も注目できる。

すなわち、ダキアを制覇しパルティアとの戦いを敢行するなど最大版図を築いたのがトライアヌス、 無理な東方版図を抑えつつプリタニアの安定化を図るなど帝国全域を自ら行脚をしたハドリアヌス、 最も安定した平和と幸福を謳歌したアントニウス・ピウス、もっともローマ帝国の平和が実現された時代だ。

もっとも性格的にも欠点もなくもっとも平和なのはアントニウス・ピウスかもしれないが、読み物として面白いのは快進撃を続けたが最後だけは無念だったトライアヌスよりは、もっとも波乱に満ちていて皇帝自身の壊れっぷりが面白いのはハドリアヌスだろう。

(2013年6月記す)




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