「三国史記倭人伝 他六篇」を読む


著者:佐伯有清訳篇
出版社:岩波文庫

古代に倭人が攻めてきたという記事が山ほど乗っているのは実は三国史記である。

この三国史記、成立はずいぶん遅い11世紀以後の話だが、王墓などの考古学的見地からいって記事の内容自体はかなり正確な部分が多いようである。それだけに古代に記された倭人と朝鮮半島の関係記事は非常に興味深い。朝鮮半島は鉄の宝庫だったからこそ倭人は攻め込む価値を見出したのだろうか? そしてなぜ五世紀以後の蘇我氏や物部氏などが登場して以降はあまり攻め込んでいないのか? 海洋技術に圧倒的レベルの差があったのはなぜか? その後発展しなかったのは? 倭人とは大和朝廷? それとも九州の有力者? 疑問を出せば枚挙に暇がない。
いずれにせよ古代朝鮮が三国に分かれ更に倭国に攻め込まれながらもやって行けたのは中国の混乱期が長期にわたったからなのだろう。じじつ3世紀〜6世紀までは中国も戦乱で外国進出の余裕はなかった時代だ。だからこそ朝鮮半島ですら分裂して争っていられたと言えるだろうし、倭国も好き勝手に朝鮮に攻め込めたのだろう。実際隋はともかく唐になると、朝鮮は唐と同盟した新羅が勝者になっている。倭国も敗れピンチに陥っている。その後、親百済の天智天皇は途絶え、親新羅と思われる天武天皇が現れたのも事実である。

脱線したが、古代の日本史を知る上では一級資料であり教科書には一切載っていないようなことも平気で記載されている。歴史ファンなら一読して損はない。そこには意外な発見もある。かなりお奨め。
(2007年3月記す)






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