テーマ:行政計画について
 
 
このテーマを選択した理由
そもそも計画というのは身近に感じる言葉で、物事の調和を形成する根本と解している。それだけにその重要度も理解しやすかったから、行政における計画の仕組み全般をテーマに選択した。
 
 
ーーー以下内容ーーー
 無計画な発展事業による不調和、その過去の反省点を是正するために、行政機関が、急激に変化していく社会、まさに生きつづけている社会において、長期的視野に立ってその方向性を調査、分析し、総合的、計画的な一定の目的の為の目標設定と、その手段の方針を企画すること、それが行政計画である。都市計画のように私人に対する行為規制な場合は法的根拠を有し、結果的にその範囲内の私人は都市区域での建築などの自由を拘束・規制されることになる。また将来の国土利用等の自治体総合開発計画なども場合には、特に他の行政主体を拘束することになるが、相互に総合計画の一部を担う意味では総合的指針の一端にもなる。
 
 行政計画自体に行政処分的拘束力はないとされている。というのは具体的な内容による特定相手に対する権限執行ではないからである。また行政計画の実質的当面的必要性としては、関係人の間で利害調整を計るためでもあり、行政の策定計画者の責任を明確にするためでもある。行政計画の大きな特徴としては、策定権者に与えられる広範な裁量権である。法律は行政計画目標と考慮されるべき要素を規定するわけだが、具体的内容の形成は行政の計画策定権者に委ねられるのである。つまり委任立法に近くなるため、行政計画の適正化を図る必要性が生じ、行政計画に対する手続き的規制が重要な要素となってくる。目標の設定とその達成という複合手段の提示が行政計画の趣旨なので、情報公開などによる計画の民主的コントロール、利害関係人参加、専門知識の導入など行政手続きへの参加の根拠も複数存在することになり、手続き段階からの周辺住民の参加も重要度を増してくるばかりである。
 



 次にその紛争類型であるが、計画の策定に対する不満、計画の具体的内容への不満、策定自体に対する不満などがある。取消訴訟についてであるが、その対象は国民の権利義務に関してなんらかの法律上の効果を及ぼす行政行為である。すなわち指針的計画は行政指導と同じく法的効果が認められないため、その訴訟は無効となる。また一定の法的効果を持つ土地区画整理事業のようなものでも、一部拘束性があるとはいえ、最高裁はそれは抽象的義務に過ぎず、直接個人の権利に変動を与える行政処分でないとし、やはりその訴訟を無効としている。しかし一方では、特定人の権利に具体的かつ直接影響を及ぼすケースは処分性を認めるべきだという考えもある。それに計画の中断などによる損害賠償についてであるが、長期計画なのだから、最初に述べたように、生きつづけている社会状況、政治的経済的情勢が、中途でその計画が合致しなくなるときが多々あり得るのは言うまでもない。それは極めて自然であるとも言えるし、明らかに要望のなくなったものを、無理矢理に過去の計算だけにおける計画を実行しても、待ち受けるのは悲劇だけである。しかしその計画の廃止は市民一般に対しては適法行為であるが、その実現を信じて投資などをしてきた私人に対しては、信頼保護原則を基礎にした不法行為を構成し、損害賠償請求も可能となるわけである。
 
更新履歴
初版:2001/2/11(自己作成の模範解答)
第二版:2001/12/11(HTMLに変換して体裁調整)
 
参考文献
有斐閣『行政法 I(第二版増補)』塩野宏著(1999)