共和政期ローマ人にとってのインペリウムの意義
 
8**3 **一*(*と*は伏せ字)
 
 意義という題目だったが、うまく書けずに、どうも意味に近いレポートになってしまった……のをとりあえず最初に述べさせて頂く。
 
 国家としての共和政ローマにとってのインペリウムは、共同体の市民の同意で成立した機能で、団結の元とも言える、いわば王権を引き継ぐような絶対至上の権利。
 
 このインペリウムを持っているのは政務官達の中でも執政官と法務官(、独裁官、前執政官、前法務官)だけである。権威溢れる監察官や平民の代表者たる護民官などにはないのである。その範囲は国政全般についてであり、元老院会議・選挙民会などの召集と主催権、軍隊の最高指揮権等である。また宗教的権限、その中でも殊に鳥占い権は重要なものだった。なお法務官のインペリウムは執政官のそれよりも劣る物であり、執政官が不在時の予備的なもので、主に民刑事裁判の指揮権を執った。
 



 なお執政官も法務官も市民によるケントゥリア民会の選挙で選ばれていて、任期は一年である。
 
 その法律的には絶対的なインペリウムにもいくつか制限がある。その対抗馬の最たる物が護民官権限だ。その救助権は政務官から市民を守り、拒否権は執政官のインペリウムにすら抵抗出来た。またローマ市民によって間接的に選ばれるのがインペリウムの使い手であるから、インペリウムの懲戒権に対して、その市民権として上訴権で対抗出来、民会などで判決を得直す事も出来た。それに加えて、インペリウムを持つ者同士が相互に差し止め権を行使出来、これも制限であると言えるだろう。あと蛇足までにだが、職務領域や職務期間も当然ながらある。
 
 それに執政官や法務官のインペリウム行使者だけが実際上にも絶大すぎる訳では決してない。ローマでは次の三つのバランスを対置させる事で理想的と思われた形態を採っているのだ。それは寡頭政的要素として元老院の権威、君主政的要素として執政官等のインペリウム、民主政的要素としての民会の自由である。元老院は執政官を含む政務官の元職などで構成された終身制機関であったため、圧倒的な発言権を持っていた。法律にはないが、この三つのバランスを対置させる事で理想の混合政体を構成している。あくまで受動的ではあるが、その影響力は絶大であった。受動的であると言えば、民会もそうであると言われていた、と言うのもその役目は執政官など政務官を選出するだけであり、招集権などはインペリウムに左右されたからである。しかし積極的な議論もなされていたとの話もあり、必ずしも受動的な存在ではない可能性も出てきた。
 
 このように能動的で国政等を決めるインペリウムを持つのは執政官などであるが、この三者機関が互いに監視し合うことで、共和政ローマは展開されていたようなのである。
 
参考文献
『ローマ法の基礎知識』柴田光蔵著(有斐閣双書)
「古代ローマのインペリウムについて」》《共和政ローマの政務官》というWEBページ(11/23時点)
他、林先生の授業の内容による。(2001/10〜2001/11)
 
更新履歴
初版(授業提出リポート)=2001/11/24
第二版(ケアレスミスな添削修正+)=2001/12/4
第三版(参考文献追加)=2001/12/5

古代史の夢